フレキシブルフィラメントで糸引き発生
前にTIANSE フレキシブルフィラメントの印刷温度を検討した際、激しく糸引きをしてしまいました。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/ender3_15-4-300x122.png)
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/ender3_15-4.png)
今回はこの糸引きを何とかできないかと検討していきます。
糸引きの原因で考えられるのは、もちろん温度です。
温度が高すぎると、溶けたフィラメントが粘って、ノズルが移動する際、糸を引くようになります。
第二にデザイン。
糸を引くのは、フィラメントを打ち出さず、ノズルが移動する際に起こります。
つまり上の写真では、底面部では糸引きは起こらないか、起こったとしても内部のインフィル部で起こるため、造形に大きな影響は与えません。
しかし柱の部分は、一層プリントして、他の柱にノズルが移動し、一層プリントして、再度ノズルが移動するということを繰り返します。
つまり複数の柱が立っている構造は糸引きが起こりやすいわけです。
(印刷温度を検討する上記の構造ではそれを狙っており、見事に目的は達成できています)
ただデザインを変えれない場合もあります。
ではプリントの設定でどうにかできないか?
それが今回のテーマになります。
フィラメントの引き戻し有効
そこで1つ対応策として考えられるのが「フィラメントの引き戻し」です。
Ultimaker Curaでプリント設定の「カスタム」を開いてみてください。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura14-1.png)
この中の「マテリアル」を開きます。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura14-2.png)
「マテリアル」の項目のうち、「引き戻し有効」という項目に、マウスオーバーしてみます。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura14-3.png)
つまり「引き戻し有効」とは、ノズルが移動する際、余分なフィラメントをノズル内に引き戻し、糸引きを少なくしてくれる機能な訳です。
今回はこの項目をもう少しいじってみましょう。
フィラメントの引き戻し距離
フィラメントを引き戻すかどうかは「引き戻し有効」で設定できそうです。
ではどれくらい引き戻すのか、その項目を表示させていきます。
まずは「マテリアル」のところにマウスオーバーします。
すると右側に歯車が出てくるので、クリック。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura14-4.png)
セッティングの表示項目を選択するウインドウが現れます。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura14-5-1024x825.png)
少しずつ下に行き、「引き戻し距離」という項目を探して、見つけたら、チェックボックスにチェックを入れてください。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura14-6-1024x825.png)
引き戻しに関する項目は色々ありそうですが、とりあえず今回は一番効果がありそうな「引き戻し距離」を検討していきます。
これで右下の「閉じる」をクリックすると、プリント設定の「マテリアル」の項目に「引き戻し距離」が追加されます。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura14-7.png)
デフォルトの引き戻し距離は「6.5 mm」のようです。
これがどのように作用するのか検討してみましょう。
引き戻し距離の検討用データ
使用するデータは、印刷温度を検討したデータを用いましょう。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/08/ender3_7-7-300x182.png)
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/08/ender3_7-7-1024x622.png)
プリント設定
それではUltimaker Curaでプリント設定をしていきましょう。
プロファイルは「Standard Quality -0.2mm」にします。
マテリアルの印刷温度は「200℃」、ビルドプレート温度は「50℃」にします。
引き戻し有効はチェックが入っていることを確認してください。
そして「引き戻し距離」を色々変えて、スライシングしていきます。
まずは比較対象として「0 mm」。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura15-1.png)
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura15-2.png)
次にデフォルトの「6.5mm」。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura15-3.png)
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura15-4.png)
引き戻しをすることで、時間が少し伸びているようです。
ただ使用するフィラメント量は変化がありません。
次に倍の13 mmを設定してみます。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura15-5.png)
引き戻し距離を13 mmにしたところ、入力エリアが橙になり、何か注意が必要なようです。
円矢印のマークをマウスオーバーしてみます。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura15-6.png)
どうやら引き戻し距離 13 mmはプロファイルからいうと範囲外(なのか範囲外に近いのか)のようです。
あまり好ましくないようなので、もう少し下げてみます。
すると10 mmで橙色が消えました。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura15-7.png)
これで大丈夫そうなので、引き戻し距離 10 mmを最大値としてスライシングします。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura15-8.png)
ということで、今回は引き戻し距離0 mm、6.5 mm、10 mmの3種類で検討してみましょう。
プリントしてみる
ということで3種類プリントしてみました。
左から引き戻し距離が0mm、6.5 mm、10 mmです。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura15-9.png)
引き戻し距離が0 mmだと、どの積層レイヤーでも糸引きが起こっている反面、引き戻し距離が6.5 mm、10 mmのものは糸引きが減少しています。
そのためフィラメントの引き戻しが糸引き対策に有効だと言えます。
しかし引き戻し距離が6.5 mmと10 mmでは糸引きにあまり違いはないようです。
つまり引き戻し距離は6.5mmで十分だと考えられます。
顕微鏡でも見てみましょう。
まずは引き戻し距離0 mm。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura15-10-1024x683.jpg)
やはり全ての積層レイヤーから糸引きが起こっています。
次に引き戻し距離6.5 mm。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura15-11-1024x683.jpg)
こちらも思ったよりもほとんど全ての積層レイヤーから糸引きが起こっています。
となると最初に糸引きが少ないなと思ったのは、それぞれの糸引きの線の太さが細いだけということでしょう。
そして気になるのが、柱の汚さです。
引き戻し距離0 mmの方が柱の積層自体は綺麗に出来ています。
次に引き戻し距離 10 mm。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/cura15-12-1024x683.jpg)
こちらも思ったよりほとんど全ての積層レイヤーから糸を引いています。
また柱も捻れている感じで乱れています。
こうなるとなかなかどの条件がいいのか分かりませんね。
まとめてみるとフィラメントの引き戻しは糸引きを”目立たせなく”するには有効。
しかし柱状の構造だと、引き戻し距離を大きくするにつれて、積層が乱れる可能性が高くなり、乱れ具合も強くなるといった感じでしょうか。
ということで、まだまだ糸引き問題は解決できない状況です。
また何か思いついたら試してみます。
次回はフレキシブルフィラメントのまとめをしてみたいと思います。
![](https://3pysci.com/wp-content/uploads/2019/09/ender3_19-1-300x236.png)
とりあえず今回はこんな感じで。
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